あそう補聴器マーケティング担当の石橋です。
この度、世界的な聴覚ヘルスケアグループ、デマントグループの日本法人「デマント・ジャパン株式会社」の本社およびラボ(補聴器工場)を見学させていただきましたのでレポートさせていただきます。
補聴器がどのように作られるのか、写真と共にお伝えさせていただきます!
デマント・ジャパン株式会社の製品としては、
当社では主に「oticon(オーティコン)」ブランドの補聴器を取り扱っており、
Real(リアル)や、Own(オウン)、More(モア)、Opn(オープン)をはじめとした様々な補聴器を当店のお客様にもご使用いただいております。
デマント・ジャパン本社は川崎市
川崎駅を出て、北西側に5分ほど歩くと背の高いツインタワーが…
それがデマント・ジャパンのある「ソリッドスクエア」というビルでした。
ソリッドスクエアはオフィスビルではありますが、カフェやコンビニはもちろん、スポーツクラブやゴルフスクール、郵便局、薬局、幼児教室、クリニックまであらゆるジャンルのテナントが入っています。
ソリッドスクエアのエントランスはとても広々。多くのビジネスマンが休憩をされていました。
エレベーターで西館16階へ。
西館16階は丸ごとデマントジャパンが入居しています。
入り口には見慣れたブランドロゴがずらり。
デマントグループは補聴器3ブランド、そして、聴覚専門機器やオーディオのブランドも持つ巨大グループ企業です。
入り口脇には「品質方針」と「品質目標」が掲示されていました。
品質改善のために一丸となっていることが見受けられます。
2023年から新体制となったデマント・ジャパン
2023年1月より代表取締役社長に就任された 齋藤 徹 氏にもご挨拶させていただきました。
齋藤 徹氏といえば、OA機器やITサービスでお馴染みの株式会社リコーをアジアパシフィックやシンガポールで拡大させ、その後、家電メーカーのハイアールフィリピンのエグゼクティブディレクターや、株式会社ダイレクト・リンクの執行役員、AIソリューションのFRONTEOの本部長など、テクノロジー業界で活躍してきた人物。
グローバル企業であり、人工知能などで先進的な技術開発を行うデマントグループは、まさに彼の本領を発揮できるステージだと言えそうです。
副社長であり、補聴器営業統括の家谷氏。
今年発売の新型補聴器「Real(リアル)」がとても好評で本年度の売り上げは大変好調とのこと。
製造部門(プロダクションサービス部) 部長の稲垣氏。
前職では半導体装置の研究開発をされていたそうで、10年ほど前から補聴器製造部隊として入社されたとのこと。その後、ラボ(工場)のレイアウト変更や3Dプリンタの導入支援など、製造部門のデジタル化、効率改善などを進めてこられたそうです。
製造部門の目標は「日本一の補聴器製造修理部門」!
難聴で困っている「人」たちを 健聴(健康)にして人生を豊かにしたい!
従業員や販売員、ベンダーなど関わる「人」たち全員が人生で幸せになるようにしたい!
と熱い思いを語ってくださいました。
ダミーヘッドマイクを使った最新機能紹介
コマーシャルマーケティング部 部長の橋本氏が、
最新補聴器「Real(リアル)」の機能紹介をしてくださいました。
ダミーヘッドマイクに補聴器を装用させることで擬似難聴の状態で補聴器の聴こえを体験することができます。
補聴器の片耳装用と両耳装用での聴こえの違いを体験。
oticon Real(オーティコンリアル)の機能、「風の対策」の機能をサーキュレーターで体験。
oticon Real(オーティコンリアル)の機能、「こすれ音の対策」の機能を筆で体験。
補聴器は見た目が大きく変わることもあまりなく、
様々な場面で本人が着けてみないと良さが分からないことも多々あり、
新製品がどう良くなったのかを理解してもらうのが難しい為、メーカーの方も色々と考えられています。
当店はダミーヘッド自体は備えておりませんが、当社全店舗に最新補聴器「Real(リアル)」のデモ器や風を起こす為のファンなどご用意しており、聴こえの体験が可能です。体験していただけると違いがとてもわかりやすいのでご興味のある方はぜひ当店にてお試しください。
次世代の耳型採取「オトスキャン」の体験
オーダーマネジメント部の小堺様からは次世代の耳型採取「オトスキャン」の紹介をしていただきました。
印象材と呼ばれる、粘土のようなものを使った耳型採取が一般的ですが、
「オトスキャン」はレーザーで耳あなの形状をデータとしてスキャンすることができます。
実際に私も自分自身の耳のスキャンを試してみましたが、痛みもなかった上、印象材では難しい、耳穴の奥の型採取もできました。
また、物理的な耳型の輸送を伴わないサーバーを介した発注となるため、納期短縮の効果もあるそうです。
ラボ(補聴器工場)の見学
本社内にあるラボ(補聴器工場)の見学をさせていただきました。
製造部隊は約50名。出荷やオーダーマネージメント部隊を含めると約100名がこのフロアに勤務されています。
受注〜受付事務
デマントジャパンでは3ブランドを取り扱っているので、見分けが付きやすいようにカラフルなトレイを使用されています。
稲垣さんは趣味が「工場見学」とのことで、歯科技工士の職場を参考にしながら職場環境の改善を行なっているとのこと。
確かに、顧客の型に合わせて職人が小さいものを手造りするということで共通点が多い職種ですね。
デマントジャパンでは3ブランドの製造・修理を行っているので、カゴに分けて整理されています。
まず、受注内容がデータベースに登録され、バーコード付きの指図書(オーダーシート)が発行されます。
指図書にはその補聴器を使われる方の聴力やオプションの内容、接客された方からの要望内容などがまとめられています。
納期厳守の為、指示書を留めるクリップにも意味があります。
出荷曜日によって色分けされているとのこと。毎日数百個も製造が行われているので、字を見て納期を確認するよりも色でパッと見れた方が早いとのこと。確実性と効率を上げる工夫が随所に見られます。
倉庫から部品の調達
ごく一部ですが、倉庫の様子です。
デマント3ブランドの豊富なシリーズの、各グレードの…、各サイズの…、各仕様の…ということで
膨大な量の補聴器キットが管理されています。
また、終売から5年間は修理対応を行っている為、過去の機種も部品を管理されています。
さらに、耳掛けタイプはカラーバリエーションも多いこともあり、管理されているキットや既製品、部品は1万種類以上にものぼるそうです。
最新シリーズOWN(オウン)の最上位グレードのキットもありました。
パッケージを開封すると…
パッケージの中にはこのような状態のキットが入っています。円盤状のフェイスプレートには主要な部品が接続されています。
シリーズによって、この時点でレシーバーが付いているものと付いていないものがあり、付いていないキットの場合は、後の工程でレシーバーを半田付けするそうです。
半田付け
お客様それぞれ異なる仕様に合わせて部品を接続していきます。
お客様の耳の形によって、プッシュボタンやダイヤルなどを接続するべき最適な位置が異なるので、
それらの位置も顧客によって自由に設計してアレンジできるように
オーティコン(デマント)の補聴器のキットは、プッシュボタンやダイヤルといったスイッチが初期状態では含まれないとのこと。
最初からキットにプッシュボタンなどが設置されていれば製造の手間を省けるのですが、手間を惜しまずお客様により寄り添える体制を整えられているそうです。
3Dスキャンと3Dモデリング
受付によって、トレイの中で耳型とワンセットにされた指図書のバーコードをスキャンすることで指示書に記載された顧客分として自動的に3Dスキャナが起動するようにしてあるそうで、これによって誤って別の方の耳型で作製されてしまうようなリスクを回避されているそうです。
確かに、日々膨大な数の補聴器を製造するのですから別の方の耳型と間違ってしまうリスクヘッジは重要ですね。
スキャンされた耳型の形状をパソコン上に表示し、補聴器の形をモデリングしていきます。
ただ単にスキャンデータぴったりで作ればいいということではありません。
装用のしやすさや長時間装用した際の圧迫感や痛み、聞こえにまで影響する重要な作業です。
職人さんたちが座られている椅子にもこだわりがあり、各種ゲーミングチェアも含め、各々が選べるとのこと。「毎日長時間の作業を行い、長年働いていただいているので、これからも長く働いていただけるように…」とのこと。職人さんたちの労働環境への配慮も感じられました。
3Dプリンタ
出来上がったモデリングデータから、3Dプリンタでシェルを造形します。
案内された部屋は他の工程の部屋とは少し離れた場所にありました。
本来であれば近い方が効率がいいのですが、3Dプリンタの近くはどうしてもアクリルの匂いがきつく、職人への配慮もあり、また、ビルの他の空調とは異なる独立した空調を行った湿度や温度の管理が行われ、シェルへの影響を抑える為に99%UVカットされた照明を使った、隔離部屋に3Dプリンタを設置しているとのことです。
メッシュ状の上に複数のシェルが連なる形で、15〜18台分のシェルがまとめて40分ほどで造形されます。
造形直後の状態はまだまだ硬化しておらず柔らかい状態ですので、後処理で固められています。
15~18台分をまとめて作るのでどれがどなたの分なのか、分からなくなりそうですが、一つ一つにうっすらと刻印されたシェルIDで判別しているそうです。
また、昔はカラーシェルを作る際は、後から色を塗っていたのですが、現在は元々から色のついたアクリル素材で作ってあるので発色も良くなり、色むらもなく、剥がれる心配もなくなりました。
シリアルやユーザー名をレーザープリンターで刻印。
その後、
「プッシュボタンが付いているか否か」や
「どの種類のレシーバーが付いているか」といった情報を
アンプ自体にプログラミングして書き込みます。
シェルの加工作業
モデリングの内容をパソコン画面で確認しながら正確な位置に穴を開けてプッシュボタンなどを設置し、半田付けしていきます。
最近のチップは性能がどんどん上がっているので、
一瞬で半田を溶かして固定しないと高温によってチップが故障してしまうとのこと。
正確かつ素早い作業が求められます。
人材としては、元歯科技工士や、電子機器の修理業をされていた方、プラモデルが趣味で得意な方などを採用されているそうです。
シェルとキットを合体させる
シェルとキットを合体させた様子。レシーバーの角度や長さ、傾きなどを確認しながら職人の耳で音を聞いて確かめながら手作業で調整をしながら固定していきます。理論はあるものの一筋縄ではいかず、職人の経験値や勘が求められる作業。
余分なプレートのカッティング作業
ハンドリーマーで外枠を落として、ドリルで削り、シェルの形状や耳型を見て装用しやすい形状を考えながら形にしていきます。職人さんたちが1つ1つ手作業で対応されます。毎日朝から晩までの作業ですので根気の要る作業です。このフェイズで、テグスの取り付けも行われます。
表面研磨〜コーティング
一つ一つ手塗りでコーティングされます。
高速スピンなど、より手短にコーティングする手法もあるそうですが、
高速スピンだとカーブの部分などアールが異なる部分でどうしても膜圧が均一にできにくいため、綺麗に塗るために手塗り方式を採用されているそうです。
顕微鏡を使わずに感覚でうまく塗れるのが職人の技量の高さだと言われていました。
UVで固めてコーティング完了となります。
品質管理チームによる検査
ここでは大きく分けて3つのチェックが行われます。
目視チェック
キズやコーティングの目視チェック・プッシュボタンなどの仕様のチェック
音響特性チェック
音の出力がきちんとできているか、ハウリングしていないか、音が歪んでいないかといったチェック
初期動作チェック
音質調整を行った上での動作チェック
多くの人の手作業で出来上がった補聴器ですが、品質チェックで不合格であれば不合格の用紙(通称レッドカード)が発行され、作り直しとなるそうです。(それでも、もちろん納期は変わらないそうです…)
最後に
稲垣氏が製造部門のことを
Craft in Japan
製造部門全員が職人であり、職人が手造りをしている。職人の手から「日本品質」を生み出している
と語ってくださいました。
クラフトマンシップを感じる貴重な見学をさせていただきました。
こうして多くの職人の手によってオーダーメイド補聴器が作られます。
私たち販売店はそれらの補聴器の音質調整を行い
お客様に納品させていただいております。
オーティコン(デマント・ジャパン)はとても特色の多い補聴器メーカーで、技術の高さや組織の力強さを感じました。
オーティコンブランドからは現在「OWN(オウン)」という耳穴型補聴器が発売されており、当店でも多くのお客様にお使いいただいております。無料でお試しいただけますのでぜひご相談ください。
オーティコンの補聴器はとても魅力的ですが、お客様はそれぞれ聴力や生活環境、音の感じ方が異なり、より満足いただける補聴器メーカーが人それぞれ異なります。
当店ではオーティコンをはじめ、全ての大手補聴器メーカーを取り扱っておりますので、ぜひ聴き比べを行った上で納得できる補聴器と出会っていただけたらと思います。
お客様からのご相談を心よりお待ち申し上げております。
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