EXPO2025 大阪・関西万博の英国パビリオンで「オーディオ テクノロジー フォー ザ フューチャー」開催。次世代のBluetooth®規格に関するパネルディスカッションが行われた

補聴器専門店「あそう補聴器」マーケティング担当の石橋です。

2025年8月21日、Bluetooth SIGと英国を代表する聴覚・音響技術支援企業Ampetronic Ltdが次世代Bluetooth®に関する特別イベントを開催しましたのでレポートさせていただきます。

 

 

会場はEXPO2025大阪関西万博の英国パビリオン

 

受付を済ませると、来場者全員分のAuri RX1 レシーバー(オーラキャストの受信機)が用意されており貸し出されました。

この機器でプレゼンをオーラキャストで聞くことができるとのことです。

 

天井を見上げると1台のAuri発信機が設置されていました。たったこの1台で広い会場内の100名を超える全員にオーラキャストの発信ができるとのことで驚きです。

 

 

貸し出されたAuri RX1レシーバーでも、もちろん音声受信できるのですが、私はリサウンドの「ビビア」という補聴器で音声受信を行いました。

専用アプリを起動すると「英語」「日本語」の2つの言語が発信されていることがわかり、「日本語(UK Hospitality)」の方を選択しました。

 

 

会場に同時翻訳担当の方がいて、すべてのプレゼンを日本語で聞くことができました。

 

 

Bluetooth SIGのマーケット開発ディレクター ヘンリー・ウォン氏

Bluetooth SIGとは

Bluetooth SIGの「SIG」とはSpecial Interest Groupの略で、
1998年に設立された、Bluetooth®の仕様策定・仕様書作成、相互運用性の推進、認知拡大、ブランド成長など、無線通信技術の標準化と推進を行う非営利組織です。

最初はBluetooth SIGのプレゼンからスタートしました。

 

 

20年ほど前のことを思い返すと、昔は機器同士の相性が悪いと接続が不安定でしたが、最近のスマホやイヤホンやスピーカーなどのが別のメーカーのものであっても安定して無線接続できるようになったのはBluetooth SIGのおかげということですね。

 

 

私は補聴器専門店に勤務しておりますので日頃から難聴に対する関心がございますが、

Bluetooth SIGのような、補聴器メーカーではない会社の方から難聴に関するプレゼンを聞くと、とても新鮮な感覚になりました。

 

 

 

 

 

Auracast™の活用により、一台のBluetooth®デバイスから、範囲内にある無制限の数のデバイスに向けたオーディオ送信が可能になりました。
・公共空間における新たなコンシューマー向け音声体験
・難聴者向けの補聴支援
・公開または非公開(パスコードによる保護)でのブロードキャストに対応
・高音質な音声およびメディアオーディオの提供
といったことが可能となっています。

 

 

オーラキャスト対応製品

Auracast™は、新たな標準機能として将来的にすべてのBluetooth®対応オーディオ機器に搭載予定とのこと。
現在、110種類以上のAuracast™対応製品が一般発売中であり、
スマートフォン、補聴器、ストリーマーマイク、イヤホン、
ヘッドホン、業務用送信機など多様な製品群において
主要なコンシューマーブランドによる対応が拡大中とのこと。
この内容の詳細は下記にて最新情報を調べることができます。
www.bluetooth.com/auracast/find-a-product

 

 

 

 

主な導入施設

シドニーのオペラハウスなど、有名な施設ですでにオーラキャストの導入が開始されているそうです。

 

 

アンペトロニック社の事業開発マネージャー エド・ベック氏 のプレゼン

Ampetronic社とは

Ampetronicは、聴覚ループシステムの設計と製造を行う世界的リーダーで、1987年に英国で設立されました。
同社は、補聴器や人工内耳と連動し、公共の場での音声明瞭度を向上させる技術を提供しています。

 

補聴器業界と共同開発されたAuri™システムは、なんと100mを超える通信距離の可能性があるとのこと。

 

Auri TX2-Nトランスミッター

Auri TX2-Nトランスミッターは2chで使用することが可能。
英語版と日本語版など複数の音声を同時に発信することが可能ということです。

また、複数台使用すればさらに多くの音声を同時に発信することも可能。

リピーターモードを使用すれば、音声を届けるエリアを広範囲に広げることも可能とのこと。

多様な目的を叶えるために様々な種類の機器を揃えるのではなく同じものを複数台揃えて対応できるというのはイベントなどで対応しやすそうですね。

 

AuriRX1レシーバー

当日は専用のAuriRX1レシーバーを貸し出され、すべてのプレゼンの同時翻訳を聞くことができました。

簡単に使用できるのでイベント会場といった不特定多数での利用もしやすい印象でした。

もちろん、Ampetronic社以外の補聴器やイヤホンでもオーラキャストに対応していれば受信可能です。

 

英国のブリストル・テンプル・ミーズ駅では、すでに列車の運行案内やホーム変更のお知らせに活用されているそうです。

 

 

 

また、東京浅草ビューホテルでの没入型空間展示「なおがら展」でもオーラキャストの活用が行われたとのこと。

 

リサウンドなどの会社と協力して実証実験を行いながら、国内外でオーラキャストが使える場所を増やしているということでした。

 

 

 

 

SONY株式会社 シニアネットワークテクニカルマネージャー 関 正彦 氏 のプレゼン

登壇者
ソニー株式会社
技術センター音響システム技術部門
音響コア技術開発2部シニアネットワークテクニカルマネジャー
関 正彦 氏

ソニー株式会社はソニーグループ内でエンタテイメント・テクノロジー&サービスの領域を担当する事業会社です。

 

 

2005年より ソニーを代表してBluetooth SIGの標準化活動にソニー代表として参画開始され
A2DPやAVRCPなど、主にオーディオ関連の規格策定のため、
Bluetooth SIG ATA Working Groupを中心に活動されています。
近年では、2022年7月に仕様策定完了した「LE Audio」の規格策定メンバーとして、ATA Working Group, GA Working Group, HA Working Groupでの活動をされ、
製品への技術導入支援も行われています。

2022年に誕生したLEオーディオの規格化にもSONYが主力メンバーとして参画しています。

2006年よりBluetooth® Classicによりワイヤレス化が進んだソニーのヘッドホンの歴史。

2017年には左右独立型が誕生し、利便性が高まりました。

そして2022年に規格化が完成したLEオーディオ搭載の製品が発売。
音の遅延が短くなり、複数への同時配信も可能となりました。

ソニーのイヤホンといえば、健聴者の方にも広く利用されていますので
誰でもオーラキャストの恩恵を得るイメージが湧きます。

 

こども音楽フェスティバル

2025年サントリーホールで開催されたこども音楽フェスティバルでは

 

聴こえにくさのあるこどもたちでもコンサートを楽しむことができるように

オーラキャスト対応のヘッドホンを使用してリアルタイム(超低遅延)で音楽を届けるという試みが行われました

 

 

今回のプレゼンでは、こども音楽フェスティバルの来場者アンケート結果も紹介されていたのですが、喜びの声も多い中、「自分にはヘッドフォンが重たかった」「もうちょっと調整したかった」など、満足を得られなかった回答結果も紹介されていて真摯な印象を受けました。

 

 

GNヒアリングジャパン 代表取締役社長 マーティン・アームストロング氏

GNヒアリングジャパンについて

GNヒアリングジャパン株式会社は、デンマークのGNグループの日本法人で、補聴器「リサウンド」の輸入・製造・販売を行っています。
最新技術を活用し、Auracast™対応の「リサウンド・ネクシア」やAI搭載の「リサウンド・ビビア」を提供しています。

今はオーラキャスト配信が行われいる場所は限られているが

2030年までに世界で250万箇所でオーラキャスト配信が行われる見込み。

これから補聴器を購入するのであればオーラキャストが搭載された補聴器を強くお勧めすると語っていました。

確かに補聴器は5年以上使うことが多いので、「オーラキャストに対応できるのが次の買い替えでいいのか?」と考えると今のうちに対応製品を選択しておくべきという考えにも納得できます。

 

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、オーラキャスト発信にかかるコストに関する話題で盛り上がっていました。
機器としてのコスト感は「プロジェクターより安い」といった表現がなされており、
Bluetooth® LEaudio自体はライセンスも不要なオープンな存在。
1台の発信機で100m以上のレンジをカバーできる。
また、設定において専門家も不要ということで、発信設備の導入のハードルは低いようです。

所感

今回のイベントは海外のプレゼンターがほとんどでした。オーラキャストで発信されていた同時通訳を補聴器(リサウンド・ビビア)で聞くことができていたのですが、
プレゼンの途中、撮影のために一旦補聴器を外したタイミングがあります。
英語力のない私は、その瞬間、それまで同時通訳のおかげで当たり前のように聴き取れていたプレゼンの言葉が全く理解できなくなりました。
その感覚がとても印象的でした。

自分が理解できる言語や音量で言葉を聴くことができるということが、こんなに当たり前のようで重要なことなのだと。

オーラキャストはそれを実現できる場所をどんどん増やすことができる可能性を秘めた技術なのだと改めて感じました。

 

Bluetooth® LEオーディオのオーラキャストがリサウンドの補聴器に搭載されいていることは存じ上げておりましたが、
オーラキャストでの音声発信が行われている場所はまだ限られているため、個人的には何となく勢いを実感できない気持ちもございました。

しかし、大阪関西万博の英国パビリオンという特別な会場で、
・Bluetooth SIG(主に規格を作ったり整備している側)
・アンペトロニック社(主に発信機や受信機といった設備機器を作っている側)
・SONY(主に健聴者向けのワイヤレスイヤホンを作っている側)
・GNヒアリングジャパン(主に補聴器で受信できるようにする側)
という様々な立場の方による熱いプレゼンを目にし、

企業を超えて、国境を超えて、世界中の難聴者を救おうとする大規模な取り組みが今まさに力強く進んでいることに圧倒されました。

そういった多くの方によって作られ整えられた技術のバトンをいち早くお客様のお耳にお届けできるよう当社も研鑽を重ねていきたいと思います。

 

当店はオーラキャストの発信機も取り扱っておりますので、皆様のご家庭などでも手軽に環境を整えることができます。

例えばテレビに発信機を接続すれば、補聴器やワイヤレスイヤホンをお使いの複数名のご家族揃ってワイヤレスで高音質・超低遅延の鑑賞をすることも可能です。

テレビの音量でご近所迷惑になることもありません。

当店はそれらを体験できる機器を取り揃えておりますのでぜひお気軽にお立ち寄りください。

 

Bluetooth®のワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する登録商標です
Auracast™ワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG,Incが所有する商標です

TOP